知らないからこそ伝えられる——TAM広報が見つけた橋渡しの価値

渡邉由姫乃さん

member敬称略

  • 渡邉TAM広報ゲスト
  • 角川TAMエンジニアファシリテーター
  • 灰谷TAMエンジニア
  • 伊波TAMエンジニア
  • 宮原TAMディレクター

株式会社TAMの広報を担当する渡邉由姫乃さん(愛称「ゆっち」)。彼女は地域創生への情熱から広報の道へ進み、IT企業という専門用語が飛び交う環境で独自の価値を見出しました。
このたびTAMを離れ新しいステージにチャレンジすると聞き、その前にじっくり話を聞かせてもらいました。

「知らない」ことを弱みから強みへ——その転換点には、深い気づきがありました。


member敬称略

  • 渡邉TAM広報ゲスト
  • 角川TAMエンジニアファシリテーター
  • 灰谷TAMエンジニア
  • 伊波TAMエンジニア
  • 宮原TAMディレクター

地域への思いが原点——観光学部での原体験

角川
もともと広報という仕事に興味があったんですか?
渡邉
めっちゃありましたね。大学生の時には、もう広報やPR関係の仕事に就きたいと思っていました。観光学部でツーリズムを学んでいて、地域創生の活動を活発にしていたんです。

渡邉さんの原点は、大学時代の地域活動にありました。その経験が、彼女の職業観を形作っていったのです。

渡邉
その時に、地域の方々が「うまく発信できない」とか「伝わらない、伝えられない」みたいなのにモヤモヤしているのを生で見ていて。じゃあ、伝える・伝わる力をつけられれば、私もいつか貢献できるなと思って。

一方で、都市部での活動も印象的でした。代々木上原という恵まれた地域でさえ、世代間のギャップという課題を抱えていることに気づいたのです。

渡邉
一番身近だったのが代々木上原で。高級住宅街ですし、30代40代でバリバリ働いてる方いらっしゃるんですけど、いざ、町内会を覗いてみるとおじいちゃんとかおばあちゃんが多い。これは都内でも地方でも変わらない課題なんだなと感じました。

この現実に直面し、渡邉さんは学生として都市の地域活動にも積極的に関わるようになりました。

渡邉
若い人が多い地域でも、地域のお祭りとか地域を盛り上げようって手探りでずっとし続けてるのはお年寄りが多かった。
渡邉
私は地域に根付いた観光学をまなぶ学生として、地域のお祭りとか主催したりとか。あと、大学の屋上で養蜂していたので、近隣の民営のこども園で蜂蜜を遠心力で絞るみつしぼり体験とかを子供たちに提供したり色々な活動をしていました。
伊波
なんか「あつまれどうぶつの森」みたいですね。島のリーダーになって、みんなが嬉しいことをやっていく、住民を増やしたりとか、課題を解決するみたいな。
渡邉
確かに!日本には色んな素敵な地域があるんですけど、地域の魅力を伝えるのに、私は一つに絞れないなと思って。広報とかPRとかなら、地域や社会に広く貢献できるのかなと考えていました。

受託制作会社の広報という未知の挑戦

前職は人材営業だった渡邉さん。地域への思いから広報を志していた彼女にとって、TAMへの転職は大きな転機となりました。

渡邉
正直、私は仕事は手段だと思っていて、「こんな風になりたい。活躍したい」というのが叶えば、あるいは叶えるのに近づくのであれば、職種や業界はどこでもいいと思ってて。あくまで何かになるための手段じゃないですか。地域に貢献できる様な人になりたいというのも、そういったニーズが活動の中で感じたから。素敵だなと思う地域や人たちが抱えているモヤモヤがあって、そういう人たちを喜ばせられそうだなみたいなイメージから来てたんで。それを叶えられるんだったら正直何でも良いんだよなって。

TAMとの出会いは、スカウティングがきっかけでした。

渡邉
前職では人材の営業だったんですけど、チャレンジしたかった広報という職種でスカウティングを受けて。デジタルというよりはアナログ派だし、IT系とかよくわからなかったけど、でも広報としての一歩を踏み出せるなら、やってみよう!みたいな感じで入社まで至りましたね。
伊波
結構チャレンジングな感じでもあるんですね。不安とかなかったんですか?
渡邉
馴染めるかなとかはもちろんありましたけど、それよりも私は「動いてみる」タイプなんで。その時はもう「広報できる、やった!」みたいな感じでした。
伊波
そういう印象には確かに見えますね。

しかし、入社してみると想像とは違う世界が待っていました。

その瞬間から、渡邉さんの新たな挑戦が始まりました。IT企業の広報という、全く経験のない領域での戦いが。

見えない価値をどう伝えるか

角川
TAMの広報で、どういったことを伝えたいとか、想いはありますか?
渡邉
理想的な話で言うと、TAMのメンバーの個性がそれぞれいろんなところでフィーチャーされれて欲しいです。個性的だったり、面白い方が沢山いるなって感じるんです。

TAMの特徴について、渡邉さんは続けます。

渡邉
爲廣さん(TAM社長)がよく「TAMは個人商店の集まりみたいな会社」と言うんですけど、本当にチームもメンバーもそれぞれ色があるなと思います。ないと思ってる人いるかもしれないですけど、絶対あって。みんな気づけ!と思ってます(笑)

しかし、受託制作会社という業態には、会社のPRをする上で特有の難しさがありました。

渡邉
難しかったところは、無形商材で、自社サービスがないというところ。いわゆるIT系でも「うちのこのサービスが、お客様の利用でこんな成果になりました!」みたいな分かりやすい実績や、どんな価値があるのかって、PRしにくいなと。

前職の人材営業にいた渡邉さんは、ある傾向に気づいていたのです。

渡邉
前職の人材営業にいる時は、いわゆるエンジニアさんの描くキャリアって、下請けの制作会社から、自社サービスがあるようなところに行くっていうロードマップを描いている方が多いなという印象があったんです。

しかし、TAMのメンバーは違っていました。

渡邉
でもTAMにいる人って、受託でいろんな方と関わって、いろんなお仕事ができることにすごい誇りを持っているなっていう感覚がすごくあって。それはすごい素敵だと思うので、そこがうまく伝わるといいんだけどな。

伝えるべき場所について、渡邉さんは明確なビジョンを持っていました。

渡邉
魅力を伝えるべき場所は、社内や社外でも採用広報部分とかが効果的そうだなって。働く人が自分の仕事やその環境に価値を感じながら働けるってすごく素敵なことですよね。だから採用広報の方が必然的に強くなるんだろうなと思います。
角川
自社サービスとか目に見えて押し出せるようなものがあると、そういうのを押し出しがちだけれども、TAMは「人」がポイント。そこを押していけたらいいなみたいな、そんな感じなんですね。

個性豊かなメンバーたちの魅力を外へ

TAMには個性豊かなメンバーが揃っているのに、なぜか外に向けては控えめ。そのギャップについて、角川さんが深掘りします。

角川
「みんな個性があるから気づけ」っておっしゃってましたけど、広報の人から見て、この人はこうだみたいなのってやっぱり持ってたりするんですか?
渡邉
ありますね!この人はこう出て行ってくれるかな?みたいな感覚はあるんですけど、ちょっとシャイな方も多いんです。
伊波
多いですよね。

渡邉さんは、社内と社外でのギャップについて具体的に説明します。

渡邉
社内だと分報(社内SNS)とかで、自分を表現する場がある人も多いのかなとは思うんですけど、それをそのまま外に出してもきっと面白いって思ってもらえる人多いんじゃないかなと。

角川さんは、渡邉さんの姿勢について自身の体験を共有します。

角川
私が入社した時も、周りの人全然知らないみたいな状況だったんですけども。オフィスに出社した時「角川さん!」みたいな感じで話しかけてくれたのが、ゆっちさんやバックオフィスチームだったので。一人一人に向き合ってくれているのは感じていて、今のお話とすごく繋がった感じがしました。
伊波
でも単純に嬉しいですよね、名前を呼んでくれるって。
渡邉
意識してるかもですね。自分がされたら嬉しいことはしたいなと思う。

「分からない」がつらかった日々

専門用語の嵐との戦い

TAMでの仕事の難しさについて、伊波さんが切り出します。

伊波
TAMで仕事していて一番難しかったことはなんですか?
渡邉
最初は、社内で皆さんが言ってることが分からないっていうのが課題だったんですよ。入社してすぐ(Slackの)自分だけのDMに"TAM辞典"っていうものを作って。1ヶ月ですごい量になりました!
伊波
横文字の英語とか、何言ってんだかよくわかんないですもんね。
渡邉
マジで分からなくて…!分かるとしたらPDCAぐらいって位、私の知識も無さすぎたのもあったんですけど(笑)

入社すぐ、チームmtgに出席させてもらってたりして、画面越しで受けるmtgは、特に深刻でした。必死にメモを取って、わからない言葉を同時に検索かけて、少しでも理解しないと、と思いつつも難しかった。

渡邉
各チームのミーティングに出させて貰っていたんですが、聞こえたであろうワードを検索かけても、3~4文字のアルファベット系とか多いし、聞き間違えたりして出てこないという。
伊波
そうですね。
渡邉
そんなことばっかりで。やばい、みんなのこと理解したいし、仕事のこと理解したい。できないと思って苦しくて。そんなことをちょっと苦しいなと思った時に…

その苦しみを変えたのは、ベテラン広報担当者からの一言でした。この言葉が、渡邉さんの広報観を180度変えることになります。

渡邉
ベテランの他社の広報さんに「世の中の人が知らない、あなたと同じ状態だと思った時に、その気持ちが分かるっていうのが大事」って言われて。
伊波
なるほど。
渡邉
社内の人たちが価値だと思っていることが、自分には分からない。きっと世の中の人も分からないから、私はそういう人たちの気持ちがわかる。そういう考え方にしてみてもいいんじゃないかなって言ってもらってから、「全てを知ってなくても大丈夫だ」って思いました。もちろん知る努力はしますけどね。
伊波
すごい分かります。知らないっていう状態でちゃんと聞けるっていう部分とか、できる部分ってありますよね。
渡邉
それからは知ったかぶりもしないと決めましたね。

知らないことを恥じるのではなく、知らない人の代表として堂々と質問する。その姿勢が、渡邉さんを優れた広報へと成長させていったのです。

フィードバックはGift

感謝のサイクルを作る仕組み

広報という仕事の難しさの一つは、成果が見えにくいことです。渡邉さんは、その悩みを率直に打ち明けます。

渡邉
社内メンバーとのチャットで、誰もリアクションくれないことに、私が突っ込むことがあるんですよ。
渡邉
これひどくないですか?って言いたいというよりかは、それくらい、皆さんから見て広報が「サブ的」なところなんですよね。理解はしていますが、役に立ってるかなとか、これ必要なかったのかな?とかって、気になるんですよね。
灰谷
実は、広報の人が楽になるツールっていうのを作ったらどうだろうっていう裏計画がLabでありまして。ゲーム感覚でリアクションを返す仕組みができないかなと。
渡邉
何それ?すごくいいじゃないですか!めちゃくちゃ大事ですよ。
灰谷
勝手にゆっちさんをペルソナにして。申し訳ございません。退職される直前にカミングアウトできてよかったです。
渡邉
面白い!入れてくださいよ。
灰谷
社内のいろんな人が社内Slackの#みんな聞いて(リリースなどをお知らせするチャンネル)へ何か投稿すると、それを社外メディアに繋げるために何か仕組みが間に入ったら、みんなも盛り上がるし、記事のネタにもしやすいかな……みたいな道具を考えたんです。
灰谷
それで、上がったらAIゆっちがコメントしてくれる。「すごいですね!」っていうコメントしたら、それと同時に本物のゆっちに「こういうのが来てるんで、ゆっちからも何か言ってあげて」って。
渡邉
すごい、私で大丈夫?
灰谷
生の人から一言コメントもらえたら、投稿してくれた人も「嬉しいな」って1ランク上の気持ちが立ち上がるんじゃないかなあと。ゆっちから一言、たとえば「あ、こんな感じなんですね」っていうコメントがあったら、些細なことだけど気持ちが動くっていうか。ゆっちもコメントしやすいよう、AIから通知といっしょにアドバイスもついてたらやりやすいかも。
渡邉
めちゃくちゃいいじゃないですか。
灰谷
そうやってSlackでコメントがとどいたら、ふつうに嬉しいし大体無視はしないと思うんですよね。「ゆっち、こういう風に言ってくれてありがとう」っていうフィードバックがすごくコンスタントに届くっていうサイクルにならないかなって。

渡邉さんは、この仕組みの本質を理解していました。

渡邉
すごい、気持ちをちゃんと汲んでくれてるんですね。なかなか来ないフィードバックだったりとか、感謝みたいな。そういう視点なんですね。
灰谷
そうそう。定期的に感謝されるサイクルをどうやって作ろうかっていう。

渡邉さんにとって、感謝の言葉がいかに重要かを語ります。

渡邉
私は単純なんで、爲廣さんからたまに来る「いつも感謝している」の一言で、1〜2ヶ月ぐらい頑張れるんですよ。
渡邉
役に立っているかみたいな、数字が見えにくいのはどこの会社の広報もそうなんですけど、そういうのあるとすごく心理的にもすごくいいですよ。

灰谷さんは、感謝の形について考察を深めます。

灰谷
何をしてもらった時が一番コンスタントにいいサイクルになるのかなと思ってて。社内の感謝ポイントっていうやつを設けてるところとかもあって。
渡邉
ありますね。
灰谷
お給料に還元するとかもあるし、本当に「ありがとう」っていう言葉で言うっていう抽象的なやつもあるけど。
渡邉
ありがとうの言葉を給料に盛り込んだらすごいんですけど。でも、リアクション大事ですね。

渡邉さんが求めているのは、相談できる関係性、信頼してもらえる関係性でした。

渡邉
この情報だったら広報さんにまず上げてみようみたいな。取り上げられるか分かんないけど、まず相談してみよう。その先が自分だと嬉しいかもしれない。
渡邉
声かけることは多いんですけど、「これだったら広報に相談してみよう」で向こうから声をかけてくれたり、頼ってくれると嬉しいです。それが100%発信してあげられるか分かんないんですけど。

広報から見た「社長直下」のプレッシャー

伊波
一般的な会社のイメージって、広報とか総務とか経理とか怖いイメージなんですよね。
渡邉
そうなんですか!
伊波
多分それが僕の中での回答的には、社長直下の部署が多いからだと思うんですよね。
渡邉
ああ、なるほどですね。
伊波
だから何か言うと社長に急に一気に話が通っちゃうみたいな雰囲気で、やっぱりちょっと怖い。嫌われない方がいいよね、みたいな感覚が強い。
渡邉
勉強になります。

伊波さんは、TAMの状況に話を移します。

伊波
TAMの広報も社長直下じゃないですか。僕みたいに思う人はいるのかもしれないですね。
灰谷
グループ全体を見ていますよね。

しかし、渡邉さんは現実を正直に語ります。

渡邉
全然そんなことないです(笑)皆さんのお仕事を全て知れているわけじゃない。でも逆に、そこを強みにしたいです。世の中的に伝わって欲しい人に伝わるために、一部分からないけど一部分かる、っていうその橋渡しになれるといいなって。

そのままでいられる場所

会話は、TAMという会社の本質に迫っていきます。

伊波
TAMに感じた魅力を一言で言えたりします?

渡邉さんは、少し考えてから答えました。

渡邉
「その人のそのままでいていい会社」って言えると思います。
伊波
感覚的にはちょっと多様性に近いんですかね。

渡邉さんは、自身の変化を振り返りながら語り始めました。

渡邉
新人の頃は「こうあるべき」っていうのが強くて、結構苦しかったんです。知っていなきゃいけないとか、みんなのレベルに合わせなきゃいけないとか。こういう風にあるべきだから言えない、とか。

その苦しさが爆発した後、渡邉さんは変わりました。

渡邉
逆にもう爆発してから、チャットのリアクションの件についても「誰も反応してくれないじゃん」みたいな感じで言ってます。

渡邉さんは、自分の捉え方を変えることで楽になったと語ります。

渡邉
これはこう思う、分からないことは分からない。エンジニアさんの前でわからないことがあっても、めっちゃアタフタしてるって分かるぐらい出していけた方が、私的にはそれが楽です。

TAMに長く在籍する人たちの共通点について、渡邉さんは興味深い分析を示します。

渡邉
TAMに長くいたり、「TAMいいな。自分に合ってる」って言ってる人って、結局自分の個性なり、自分の思いを何かしら形で出していると思います。
渡邉
言葉が得意な人は分報で、文字で表現してたりとか。オフラインのコミュニケーションでその人らしさを出す人もいたり。文句を言いながらも楽しんだり、そのまんまの人でいるっていうことが多分合ってるし、そういうことをさせてくれる会社なのかなって。

伊波さんは、その感覚に共感を示します。

伊波
僕も、受け入れられている感覚はすごく感じますね。
渡邉
そこがうまくいい感じにまとめられたらいい。

この「そのままでいい」という環境は、単なる放任ではありません。むしろ、個性を認め合い、それぞれの強みを活かしながら成長できる場所。それがTAMという会社の本質なのかもしれません。

成長を見守る温かい眼差し

会の終盤、参加者たちからこの会への感想が語られました。

宮原
いろいろ聞いてめっちゃ考えちゃって、全然まとまってないけど。惜しい人がいなくなってしまうんだなという率直な気持ちと、社内でも多分どこ行ってもその強いメンタルとか、解釈の力を持ってたら絶対活躍できるから、これからも楽しみだなと思う気持ちです。
伊波
どっかで名前聞いた時に「あ、やっぱり」って分かるみたいな感じになりそうだなって感じはしますね、活躍してるところ。

宮原さんは、渡邉さんの成長を間近で見てきた一人として、特別な思いを語りました。

宮原
入社された時にすごく不安そうで、確かに大変そうでした。仕事内容が決まってない中で、それを自分で作っていくのはすごい難しかったと思うんですけど、ここまでできたのが本当にすごい。
渡邉
ありがたい。皆さんのおかげです。本当に叩かれ、揉まれ、鍛えられて、今がある。
伊波
本当に長い間お疲れ様でしたっていう部分と、すごい寂しくなるなって感じはありますね。僕も短いですけど、すごくいろいろ話しかけてくれたり、いろいろ話したこともあったりしたんで、ありがとうございました。
渡邉
いえ、ありがとうございました。すごい見送られてる感じがする。初めて。ありがたいです。

灰谷さんからは、渡邉さんの「知らない」という姿勢を象徴するエピソードが語られました。

灰谷
マーケティングウィークのバナバナカードプロモーションで、通り掛かった方に「ここ何やってる会社なんですか」っていう風に聞かれてて。「いや、私もわかんないんです」っておっしゃってるとこ生で見たんで。あ、これだ!って思いました、今日。
渡邉
素直に行きすぎやろって感じですよね(笑)
灰谷
そん時すごく楽しいなって思って見てました。通りがかった方もすごく、狙い通りというか期待通りの「いや、わかんないですよね」って言って、ちょっと安心してる顔してたんで。あ、そういうことなんだなって思って聞きました。

渡邉さんは、その「分からない」から始まるコミュニケーションについて詳しく説明します。

渡邉
広報の勉強会やセミナーとかで1分間ピッチ、3分間ピッチで自社のアピールタイムとかあるんですよ。毎度「TAM理解難しいからわかってもらえるかな〜?」って思いながらもやってみるか!と思って行くんです。話してる間に何の会社か分かんなくなっちゃうとか最初の方は特にあったなあ。
渡邉
一応、型でブラッシュアップしきった感じは自分の中であるんですけど、名刺交換したら「結局何してる会社ですか?」みたいなってよく言われて。「ですよね」みたいな。「何に興味ありますか?」って聞いてみたりとかして。そこから「ああ、それだったらうちこういうのあって」みたいな感じで会社を説明しています。
灰谷
「分かんないですよね」から始まる(笑)

この「分からない」から始まるコミュニケーション。それこそが、渡邉さんが見出した広報の真髄だったのかもしれません。

モノづくりの心を磨くアドバイス——知らない立場の大切さ

最後に、恒例の「モノづくりの心を磨くアドバイス」を聞かれた渡邉さん。

渡邉
難しくないですか、これ。
灰谷
でも、それさっきのやつかもしれないですけどね。知らない立場で知らない人に届けるっていうのを大事にしてる。
伊波
本当にそれは思いました。もう奥義に聞こえますね。
渡邉
それでお願いしてもいいですか?
灰谷
「知らない立場で、知らない人に届けることを大事にする」

伊波さんは、この転換の重要性を改めて強調します。

伊波
知らないといけないっていうプレッシャーから、そこに転換させるのってすごいと思いますよ。だって完全に180度変えるわけじゃないですか、考え方を。その「知らなくてもいい、知らない方がいい」みたいなのを受け入れられるって、相当考えて、考えて、他の人のことを見て、多分体験できないと絶対に切り替えられないと思います。
伊波
そこからすごく仕事が楽しいと思えたりとか、「あ、こんなことしてみようかな」とか、なんかそんなことをやり出したんじゃないかなっていう雰囲気を感じる。
渡邉
へえ、そうなってたらいいんですけどね。ちょっといい感じにしてください。

伊波さんは、エンジニアの視点からも共感を示します。

伊波
結構その、本当に最後の話はなんか僕らエンジニアの部分でも通じる部分があったりはすると思うんですよね。やっぱり当たり前で聞いてる部分とかもあったり、当然だよねみたいな話があるんですけど、そうじゃないよねっていう。やっぱりそのアンチテーゼ的な部分も必要だよねっていうのは。
伊波
知らないとか、知らない人たちのことをちゃんと考えるとか。そういった部分ですごく強くあるんで。知らない人のためにやってるんですもんね、そもそも広報っていうのはね。知ってる人のためにやることじゃないですもんね。

渡邉さんは、最後に本音を語ります。

渡邉
難しいです、本当に。だから皆さんがやってることがすごいとは思うんです。最初から今まで分からないですよ、何がすごいか。
渡邉
すごいのは分かるんです、もちろん。日々自分が知らない知識や技術を磨き続けていて、こういうみんなが使いやすいだったりとか、見やすいだったりとか、求めてるものを一つ作り出すってこと自体、マジですごいと思ってるんですよ。
渡邉
なんですけど、その中の「ここが何々」みたいな、「この技術が何々」みたいな。すごそうではあるが分からない、みたいな。めっちゃ多くて。
伊波
知らない人に伝えるって、本当に大事ですよね。

受託制作会社の広報として奮闘する中で見出した「知らないことの価値」。専門性が求められる時代だからこそ、「分からない人の気持ちが分かる」ことが強みになる。

渡邉さんの素直な言葉と、それを温かく見守るTAMメンバーたちの姿から、真のコミュニケーションの在り方と、個性を大切にする組織文化が見えてきました。

「知ったかぶりをしない」「そのままの自分でいい」——シンプルだけれど実践は難しい、でも大切なことを、渡邉さんは身をもって教えてくれました。

TAMという場所で、「知らない」を武器に変えた広報担当者。その姿は、専門化が進む現代において、私たちに新しい視点を投げかけています。